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総合政策学部 総合政策学科

「ソーイング・ビー」の効用

2020.3.17
総合政策学部准教授 大野朝子

 「ソーイング・ビー」は、Eテレで毎週木曜日に放送中の英国のテレビ番組のタイトルである。いわゆるオーディション番組の一つで、ソーイング好きの素人が集まり、さまざまな課題をクリアしながら、腕を競い合い、トップを目指す、という内容だ。
 課題には、型紙を使った洋服作りの他に、既製服を再利用した自由なアレンジも含まれる。出場者にはそれぞれ得意、不得意があり、課題によって実力が十分に発揮できなかったりする。中には、指示に従わずに自己流で縫ってしまい、失格になる参加者もいる。
 ソーイング、というと、一般的に「家庭の主婦のたしなみ」のようなイメージを持たれがちで(例えばミシンは昔から花嫁道具の一つである)、この番組の出場者も、実際に中高年の女性が多い。ただ、中には男性の参加者もいて、「スチーム・パンク」(ゴシック風のパンクスタイル)のコスプレを趣味とする、長髪に顎髭、タトゥーのいかつい労働者階級の中年男性もいれば、座禅が好きな、小花柄のシャツが似合うおしゃれなインテリ高齢男性、(失礼ながら)ソーイングをするようには見えない、がっちり体型の警察官の中年男性も登場する。
 さまざまな背景を持つ一般人の出場者が、ソーイングのチャンピオンの座をかけて奮闘する様子が、実に興味深く、毎週見ていて一緒に泣いたり笑ったりしている。かくいう私も「花嫁道具」(?)として、結婚を機に、もともと欲しかったミシンを購入したが、ソーイングの趣味は長続きせず、せっかく買ったミシンも、10年近くクローゼットにしまったままだった。
 だがしかし、ついに我が家のミシンが活躍する時代がやってきた。新型肺炎の騒ぎの中、マスクの買い置きがほとんどなくなり、花粉症に追い打ちをかけられ、手作りせざるを得なくなったのだ。
 ネットで「マスク」を検索したところ、親切な誰かが型紙を載せてくれていたので、早速ありがたくプリントアウトさせてもらい、ガーゼをカットし、ミシンで縫い合わせた。一枚作るのに、2時間くらいかかってしまったが、なかなかうまく出来たと思う。「昔取った杵柄」というか、意外なところで手腕を発揮できて、一人ニンマリしていたが、ニュースを見たら、「もうすぐマスクが手に入る」という。とりあえず、ソーイングの楽しみが味わえたので、良かったと思う。