工学研究

工学研究からのアプローチ

運動とオノマトペ

古林俊晃 教授
工学部 臨床工学科
古林俊晃 教授
 スポーツには、力強さ、速さ、あるいは美しさを競うような競技独自の特性があります。
我々はこれらの競技の技の印象を、抽象的な言葉で説明することがあります。

例えば、「グゥー」と相手を引き寄せる、「パッ」とかわして「サッ」と突く、「スゥー」と目の前を通り過ぎるなどです。
それぞれ力強さ、速さ、滑らかさを感じませんか。
これらは我々人間が共通して持つ感覚として知られています。

このように、ある事象から連想される言葉や音の表現型をオノマトペ(擬態語や擬音語)と呼びます。
我々は日常生活でも少し困難な作業(あるいは運動)をする時に、無意識にオノマトペを用いて、運動の質を変えていることがあります。
スポーツではそれが如実に出てきます。もしかすると、体育や部活の指導中に先生がいろいろなオノマトペを使っているかもしれません。

それではこれらのオノマトペが生体のどのようなメカニズムにより、運動の質を変えるのでしょうか。
オノマトペはもともと言語の一つであるため、脳では言語を扱う領域で処理されることが、少しずつ分かってきています。

ところが、運動を扱う領域はまた別の場所です。
それぞれ異なる脳領域がどのように結びつくのか、その点を明らかにしようとするのがこの研究の目的です。

オノマトペの効率的な使い方が分かると、筋肉や骨に過剰な負荷を与えずに円滑に運動ができるようになり、運動による障害を減らすことに貢献できるかもしれません。
また障がいを持った方々を支える介護やリハビリテーションの領域でも役立てるのではないかと思っています。