工学研究

工学研究からのアプローチ

音を中心とするメディア情報処理

鈴木陽一 教授
工学部 知能情報システム学科
鈴木陽一 教授

研究の概要

 情報通信技術(ICT)は,私たちに新しい空間と時間との関係を与え続けてきました。たとえば19世紀後半には,電話が距離の壁を越えた音声コミュニケーションを,電気蓄音機は時間の壁を越えた音の記録を可能にしてくれました。20世紀の半ばにはテレビが私たちの生活を大きく変えました。

 現在では,エレクトロニクス(電子工学)を基盤としたコンピュータとネットワーク技術の進歩により,たとえばスマートフォンひとつあれば,私たちは遠くの人ともいつでも自由にコミュニケーションがとれるようになりました。また,遠隔会議は当たり前で,遠隔地同士の人が一緒にもの作りに取り組める時代になってきています。このようなコミュニケーションでは,音(聴覚情報)や映像(視覚情報)など,複数の感覚情報(マルチモーダル感覚情報)を自由にやりとりできることがとても重要です。

 その中でも,音(聴覚情報)は,音声(言語情報)を理解したり,音楽を楽しみ,ときには危険を察知したりするために重要な役割を果たしています。一方,聞きたくない音(騒音)を防ぐことも大事です。また,映像(視覚情報),さらには全身振動や動き(加速度情報)など他の感覚情報も一緒にやりとりができると,より強い臨場感を感ずることも可能になります。テーマパークのアトラクションで,音と映像に加えて,イスが少し前に揺れると,その(加速度情報の)効果で,「落ちる!」という強い感覚が得られたりするのも,その一例です。

 感覚にかかわる情報システムを作るには,人間の感覚情報の処理の仕組みを知ることがとても大事です。なぜなら,どのようなコミュニケーションでも,そのどちらかの端には必ず人間がいて,情報システムの恩恵を受けるのは私たち人間ですから。私は,このように考え,次のようなテーマの教育と研究を進めています。

先生の研究の社会との関わりは?

生活の幅広い領域で全ての人に関わりがあります。社会の中でどんな応用の可能性がありますか? 音は生活に必須で,様々な形で利用され,また人間に影響も及ぼしますので,コミュニケーションをはじめとして生活の全ての場面で応用され得ます。

高校生に向けて研究領域の魅力を伝えるメッセージをお願いします。

音響学は古くからある領域ですが,ディジタルの世界,サイバー空間の広がりによって,メディア情報処理における役割,可能性が広がっています。楽しく学び,研究しましょう!