空気環境と建築との関わりでは、特に建材がキーポイントになります。建材には無垢材のような自然素材と、合板・集成材やクロスなど化学的に合成された新建材と言われるものがあります。
「いわゆる合板や集成材は接着剤や塗料などが使われています。この接着剤などから化学物質が出てきやすいんですね。空気中にその化学物質が存在する建物にいると具合が悪くなる人がいます。1990年ぐらいにシックハウス症候群と言われ、大きな問題になりました。接着剤には、建材の接着効果の劣化を防ぐためにホルムアルデヒドという防腐剤を入れるんですが、主としてそれが原因でした。昔の住宅は隙間だらけで、自然に空気の入れ替えができていたんですが、1980年代以降、高気密・高断熱時代になって室内を密閉したことがあだとなって換気不足になってしまい、放散された化学物質が室内にとどまりシックハウス症候群を引き起こしました。住宅にとって空気を入れ替えることは、非常に大事なことなんです」。
2003年の建築基準法の改正で、住宅建設におけるシックハウス対策が義務づけられ、換気設備の設置が法的に定められました。「1時間あたり室内の空気を半分入れ替えましょうということになったんですね。浴室などに設置された換気扇で24時間換気をするようになっています」。シックハウス症候群は下火になってきたものの完全になくなったわけではないと一條先生は説明します。「新種の代替物質から出てくる可能性もありますし、新建材ではなく無垢材でも具合がわるくなる人がいます」。
建材から放散される化学物質に対する対策技術はいくつかあるといいます。「空気清浄機や消臭剤などの室内空気対策品の設置のほかに壁、床や天井の表面をシーリングしたり、またはあえて揮発性の有機化合物を放散させて除去するベイクアウトと呼ぶ技術。光触媒の酸化還元反応による技術。ただ、いちばんは換気することです」と一條先生。ちなみに観葉植物のようなパッシブ手法なものは実験でもあまり効果はみられず、空気清浄機など空気浄化装置のアクティブ手法のものは一定の効果がみられた、といいます。「つまり建材などを使うことによって室内に汚染物質が発生する。それを排除するためにはまず換気、その補助的な技術として空気清浄技術があるということです」。
「かつて建材から出た化学物質によるシックハウス症候群が問題になりました」と一條先生。