研究開始時の研究の概要
本研究は肩こり有訴者の脳の活動を皮質脊髄路の興奮性から検討し,筋の硬さや肩こりの主観的感覚との関係を明らかにする。さらに皮質脊髄路の興奮性を低下させ,広範囲且つ深層の神経線維の脱分極が期待できる末梢への反復磁気刺激を肩こり有訴部位に長期間行った際の効果を,皮質脊髄路の興奮性,筋の硬さ,および肩こりの主観的感覚から検討する。以上より,神経の興奮性からみる肩こりの病態の解明と,その変容を目的とした治療効果の検証を行う。
研究実績の概要
2020年度は,①末梢への磁気刺激が電気刺激よりも小さい痛みで関節運動を誘発できること,②健常者においても自覚的な肩こりは一定のキーボードタイピングによって引き起こすことが可能であること,③磁気刺激による筋収縮がオンタイムに確認できることを,超音波画像診断装置の併用により可能なことを示した。
①の検討により本研究で磁気刺激を用いる根拠が証明されたことになる。すなわち肩こりの原因の1つには筋血流量の滞りがあげられ,その治療方法としてより小さい痛みで筋収縮を引き起こすことが可能な磁気刺激が有用であることへとつながっている。また磁気刺激の治療効果を明らかにするためには,はじめに比較的短い時間感覚での肩こりの変化を検討する必要がある。②の研究により,一定時間のキーボードタイピングにより意図的に肩こりを引き起こすことが可能であることを明らかにした。さらにこれまでに磁気刺激による筋収縮を可視化する手法は報告されていない。③の研究により磁気刺激中の筋の収縮の程度を客観的に示すことが可能となった。