精神科病院の災害時対策事例や知恵を集積
松田先生は、精神科病院での約10年の実務経験と看護研究を糧に、大学教員になることを決意し、災害時における精神科病院の対策や備えについての学究を深め続けています。
2015年から4年かけて取り組んだ「精神科病院の特殊性に応じた災害時対策に関する研究(科研費15K20674)」では、大災害があった地域の精神科病院の看護管理職者を対象にアンケート調査を実施し、そのデータの集積と考察を重ねました。東日本大震災後ということもあり、どの病院も災害マニュアルの見直しやBCP(事業継続計画)の作成、職員間の連絡手段の改善など、災害時に患者の命を守る備えに力を入れ始めていることが分かりました。一方で、精神科病院では、危険を認知できない患者の避難誘導や速やかな所在把握など、より難しい課題を抱えていることも浮き彫りになりました。
そして、前回の調査結果を踏まえながら、2023年より「精神科病院の特殊性に応じた災害対策の現状と課題に関する研究(科研費23K09886)」として、より内容の深化を目指した調査に取り組んでいます。松田先生は、「被災された病院の看護部長や看護師から寄せられた具体的なエピソードは誰しも経験できるものではないので、本当に貴重な資料となっています。この調査によって得た災害時の経験と対策をもとに、より考察を重ね、精神科病院における災害マニュアルの改訂や新たにBCPの練り直しを検討する際の基礎資料として活用できるよう、研究内容をさらに前進させていきたいです」と決意を表してくれました。
精神科病院の特殊性に応じた災害時対策に関する研究(科研費15K20674)研究成果報告より引用(2019)