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大学概要
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2021年度東北文化学園大学・東北文化学園大学大学院学位記授与式 学長式辞

東北文化学園大学学位記授与式
東北文化学園大学学位記授与式
東北文化学園大学学位記授与式
東北文化学園大学学位記授与式
 初めに、一昨日の福島県沖を震源とする地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
東北文化学園大学を代表して、卒業と修了のお祝いの言葉を述べさせていただきます。本日、晴れて卒業と修了の日を迎えられた皆さん、誠におめでとうございます。また、今日までの長い学生生活を支え続けて下さった保護者の皆様にも心からお祝いを申し上げます。

 初めに、皆さんが入学以来、様々な困難を乗り越えて学び続けてこられたことに、心から敬意を表します。かつて、入学式の日に多くの教職員と先輩の学生に迎えられ、皆さんの大学生活がこの国見の丘のキャンパスで始まりました。その時の緊張した気持ちを今でも覚えているでしょうか。その後、楽しいことや充実したことばかりではなく、つらいことや悲しいこともあったのではないでしょうか。最後の二年間は、新型コロナウイルス感染症の拡大のため、思い描いていた学生生活とは違っていたかもしれません。様々な困難を乗り越えて今、皆さんが手にした学位記は努力と、もしかしたら涙の結晶かもしれません。どうぞ自分自身を誇りに思い、そして胸を張ってください。私も皆さんをとても誇りに思います。

 皆さんがこれから進んでいく社会は、変化を止めることは決してありません。AIを初めとするIT関連の技術や様々な病気の治療を可能とする生命科学技術などは、今後ますますその進歩が速くなると思われます。一方、今、ウクライナで起こっていること、これは決して許されるものではありませんが、このことからも想像されるように、世界情勢はますます複雑化し、安全な国と罪のない人々の生命が脅かされる国の格差、そして富める国と貧しい国の格差は、今後、益々拡がる可能性があります。地球温暖化と関連する気候変動も避けて通ることができない問題です。また、日本の国内に目を向けても、特にコロナ禍にあっては様々な格差が目につきます。若者の人口が減少していくことも、大きな問題です。是非、社会の変化や社会が抱える様々な問題に関心を持ち続けながら、そして自分がそれらとどうか関わっていくかを考えながら、それぞれの道を歩んでほしいと思います。

 さて近頃、教育関連の分野で「grit」という言葉をよく耳にします。日本語では「やり抜く力」と訳されることが多いようです。先日、アンジェラ ダック ワースという中国系米国人の女性心理学者が書いた「gritやり抜く力」に関する本を読みました。神崎朗子という方が翻訳しています。ダックワース博士は、膨大な客観的データに基づく「やり抜く力」の研究で大変有名です。この本の一番初めに出てくるのが、ウエストポイントと呼ばれる米国陸軍士官学校の例です。全米から14,000人以上の高校生が志願し、米国の大学入試の出願に必要な大学進学適性試験のスコア、高校での成績、リーダーとしての資質、そして体力測定により最終的に1,200人が入学を許可されるそうです。ところが、5人に1人は卒業前に中退するとのことです。しかもその大半は入学直後の厳しい基礎訓練に耐えられなくて辞めてしまうそうです。

 ダックワース博士の研究結果によれば、この過酷な訓練を乗り越えられるかどうかは、入学時の成績ではなく、10項目からなる「やり抜く力」を測るスケールで予測できるとのことです。この本では、他の様々な実例が客観的なデータと共に示されていて、その結論を一言で言うとビジネス、科学、芸術、スポーツなどどんな分野においても、「成功している人」は、学歴やIQ、あるいは才能に恵まれているのではなく、「やり抜く力」、つまり長期的な目標を達成するための「情熱」と「粘り強さ」を持っているというものです。この「やり抜く力」は決して生まれ持った性質ではなく、何歳になっても獲得でき、さらには向上させることができるとダックワース博士は主張しています。社会への門出にあたり、一読をお勧めします。

 本学の建学の精神・理念にある「輝ける者」とは、自立した力を持ち、他者とかかわり合いながら未経験の問題に応える人です。これからも皆さんが新しいことを学び続けるとともに、世界と日本の情勢と課題に関心を持ち続け、「やり抜く力」を磨きながら、自らの輝きを増していくことを願い、私の式辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。

2022年3月18日
東北文化学園大学
学長 加賀谷 豊