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大学概要
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2022年度東北文化学園大学・東北文化学園大学大学院学位記授与式 学長式辞

東北文化学園大学学位記授与式
東北文化学園大学学位記授与式
東北文化学園大学学位記授与式
東北文化学園大学学位記授与式
 東北文化学園大学を代表して、お祝いの言葉を述べさせていただきます。本日、晴れて卒業と修了の日を迎えられた皆さん、誠におめでとうございます。また、今日まで長い学生生活を支え続けて下さった保護者の皆様にも心からお祝いを申し上げます。
 かつて、多くの教職員と先輩の学生に迎えられ、皆さんの大学生活がこの国見の丘のキャンパスで始まりました。その時の緊張した気持ちを思い出してみてください。ここ3年は新型コロナウイルス感染症の拡大のため、入学前に思い描いていた学生生活とは違ったかもしれません。
 本学はできる限り、対面授業を継続することを目指し、そのために皆さんにしっかりとした感染対策をお願いしてきました。厳しすぎると感じた方もいるかもしれませんが、皆さんの協力のおかげで、後半は対面授業をほぼ維持することができました。
 この感染症への日本の対応がもう直ぐ大きく変わるというところで、皆さんは巣立ちの日を迎えました。感染症だけではなく様々な困難を乗り越えて、皆さんは学位記を手にします。どうぞ自分自身を褒めてあげてください。私も皆さんをとても誇りに思います。
 さて、昨年来、日本や世界を揺るがす大きな出来事がいくつもありました。昨年2月にはロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。侵攻から1年以上が経つ今も激しい戦闘が続いており、ウクライナでは子供や女性を含む多くの人命が失われ続けています。かつてはいずれもソビエト連邦に属していたウクライナとロシアによる戦闘が続き、同じくソビエト連邦に属していたベラルーシがロシアを支援しています。一方、第二次世界大戦でソビエト連邦に侵攻して壮絶な戦闘の末に敗れたドイツは、他の西側諸国とともにウクライナを支援しています。
 2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチは、今回のウクライナ侵攻をきっかけに再び注目を浴びることになりました。彼女はウクライナに生まれ、ベラルーシでジャーナリストとして活躍し、現在はドイツに居住しています。代表作の一つが「戦争は女の顔をしていない」という作品です。初めは群像社から、その後は岩波書店から出版され、三浦みどりという方が翻訳しています。また、カドカワからはコミックとして出版されています。初めて本のタイトルをみたとき、戦争を決断するのも、戦場で戦うのも男だから「戦争は女の顔をしていない」のだと思いました。そうではありませんでした。第二次世界大戦でドイツはソビエト連邦に侵攻し、両国間で激しい戦闘が繰り広げられましたが、ソビエト連邦では100万人を超える女性が従軍したそうです。しかも他の国と異なり、看護師や軍医だけではなく、多くが戦闘員として武器を持って戦っていました。
 しかし、戦後に戦争のことを語るのはほとんど男性であり、同じく戦闘に参加した女性は白い目で見られたことから、多くは口を閉ざしていたそうです。そこで、戦後生まれの作者は従軍した500人以上の女性から話を聞き取り、一人ひとりが見て、聞いて、肌で感じた戦場の最前線を一人称で語らせています。戦争を描いた従来の作品とは一線を画し、戦争の現実を知る上でも一級のノンフィクション作品とされています。
 この作品は、当初、当局の検閲により、多くの記述が削除されたそうです。当時の検閲官の言ったことも作品の中で紹介されていて、とても印象に残りました。以下に引用します。「たしかに我々が勝利するのは並大抵のことではなかった。しかし、その中でも英雄的な手本を探そうとするべきだ。そういうものは何百とある。ところがあなたは戦争の汚さばかり見せようとしている。中略。真実というのは我々が憧れているものだ。こうでありたいと願うものなのだ。」引用はここまでです。
 今、ソーシャルメディアを含めて世の中には情報が溢れています。その中には、真実もあればフェイクと呼ばれる虚偽の情報もたくさん混在しています。当然、「我々が憧れているもの、こうでありたいと願うもの」が、真実とは限りません。真実でないことの方が多いかもしれません。皆さんがこれから歩んでいく社会は、刻一刻と変化しています。その中で、皆さんは正しい情報を必要とし、少なくとも情報源が信頼できるかを十分に見極めることが求められます。
 本学の建学の精神・理念は、「輝ける者を育む」です。「輝ける者」とは、自立した力を持ち、他者とかかわり合いながら未経験の問題に応える人です。これからも皆さんが日本と世界の情勢と課題に関心を持ち続け、常に真実を見極めながら、自らの輝きを増していくことを願い、私の式辞といたします。
 本日は、誠におめでとうございます。

2023年3月17日
東北文化学園大学  
学長 加賀谷 豊