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大学概要
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2023年度東北文化学園大学・東北文化学園大学大学院入学式 学長訓示

東北文化学園大学入学式
東北文化学園大学入学式
 皆さん、ご入学誠におめでとうございます。皆さんを仙台の街並みを見下ろす、そして桜が咲き誇る国見の丘に建つ東北文化学園大学に迎えることができ、教職員一同、とてもうれしく思います。保護者の皆様にも心からお祝いを申し上げます。
 本学は1999年に設立され、4年前に20周年を迎えたのを機に建学の精神と理念を「輝ける者を育む」と定めました。「輝ける者」とは、自立した力を持ち、他者とかかわり合いながら、未経験の問題に応える人です。入学式で新入生の皆さんにお願いしていることがあります。今から、30秒間、眼をつぶって自分が卒業の時にどんな「輝ける者」になっているか想像してみて下さい。こんな自分になっていたいという理想を高く掲げてみてください。今から30秒です。
 30秒が経ちました。今、掲げた理想に向かって、皆さんが進んでいくのを我々教職員はしっかりとサポートします。もし途中でつまずきそうになったら、いつでも我々教職員や学生相談室に声をかけてください。
 さて、新型コロナウイルス感染症の拡大により学生同士の交流が制限され、その結果、喜びや悩みを共有できる友人が少なくなったと報告されています。このことが、入学前に思い描いていた学生生活とは違ったと感じる人が多くなった要因の一つかもしれません。本学では、2020年度の後半から対面授業を再開し、2021年度は春に一時オンライン授業としましたが、その後はほぼ対面授業を継続しています。昨年秋には、3年ぶりに学園祭が行われました。また、この3月からは、課外活動の制限も大幅に緩和されています。感染対策は重要ですが、皆さんが心に描いていた大学生活に少しでも近づくように我々は支援していきます。また、各学科・専攻毎に皆さんが先輩の学生と触れ合う授業なども用意しています。あの先輩のようになりたいと思える人に、皆さんが巡り会うことを願っています。
 さて、ここからは、昨年の入学式でもお話しした「grit」、スペルはg・r・i・t、日本語で「やり抜く力」についてです。アンジェラ・ダックワースという米国の女性心理学者が著者で、神崎朗子という方が翻訳した「gritやり抜く力」という本がよく知られています。
 ダックワース博士は、膨大な客観的データに基づく「やり抜く力」の研究で大変有名です。子供の頃の博士は、成績抜群ではなかったそうですが、ハーバード大学を優秀な成績で卒業し、イギリスのオックスフォード大学で博士号を取得、マッキンゼーという米国に本社をおく世界的なコンサルタント会社に就職しています。ところがその後、この超一流企業を退職して、公立中学校の教員になります。そこでの経験が後の独創的な研究につながったそうです。
 担当したクラスには頭の回転が速く、呑み込みがとても速い生徒がいた一方、そうでない生徒たちは授業について行くのに苦労したそうです。ところがその後の成績評価では、能力が高い生徒たちの成績は必ずしも良くなく、逆に最初は問題が解けずに苦労した生徒の中に、予想以上に良い成績を収めた生徒が何人もいたそうです。よく伸びた生徒たちは欠席せず、授業態度がよく、ノートをしっかりとり、よく質問をしたそうです。最初は問題を解けなくても、教師の力を借り、こつこつと努力を続けたことが成績に表れたようです。
 この本では、様々な実例が客観的なデータと共に示されていて、その結論はビジネス、科学、芸術、スポーツなどどんな分野においても、「成功している人」は、学歴や知能指数、才能に恵まれているのではなく、「やり抜く力」、つまり目標を達成するための「情熱」と「粘り強さ」を持っているというものです。「やり抜く力」は生まれ持った性質ではなく、何歳でも獲得できると言っています。
 先日、侍ジャパンの優勝で幕を閉じたワールド・ベースボール・クラシックでは、大谷翔平選手が最優秀選手に選ばれました。この本は大谷選手に直接触れていませんが、大谷選手のようなスーパースターが何人か出てきます。そこで述べられていることを、もし大谷選手に当てはめるとすれば、次のようになるかもしれません。大谷選手と同じレベルの才能を持った人は世の中に何人もいるはずです。大谷選手は、そこに大変な努力を積み重ねることで投手として、そして打者としてスキルを飛躍的に伸ばし、そこでさらに大変な努力を積み重ねることで投手として、さらには打者として目標を達成できたと考えられます。つまり、スキルを上げるためには努力が必要で、偉業を達成するのにもう一度努力が必要になる、これがダックワース博士の理論の一つです。
 ここで、先ほど皆さんが考えた卒業時にどんな「輝ける者」になっているかを思い出してください。自分が理想とする職業を選んで社会人として歩み始めている姿を思い浮かべた方も多いと思います。その夢を実現するためには「やり抜く力」、つまり目標を達成するための「情熱」と「粘り強さ」はとても大事です。時には友人や先輩の、時には我々教職員のサポートを得て、皆さんは必ずその夢を実現できるはずです。大谷選手も多くの人に支えられてきたはずです。
 結びに、私たち東北文化学園大学の教職員は、皆さんがやり抜く力を発揮し、卒業の時、一人ひとりが輝いていることを心から願っていること、その実現のために私たちが常に皆さんのそばにいるのを忘れないで欲しいことをお伝えして、入学のお祝いの言葉とします。

2023年4月4日
東北文化学園大学
学長 加賀谷 豊