本日、晴れて卒業と修了の日を迎えられた皆さん、誠におめでとうございます。
今日まで長い学生生活を支え続けて下さったご家族や関係者の皆様にも、心からお祝いを申し上げます。また、お忙しい中ご臨席いただきました来賓の皆様に、深く感謝申し上げます。
ここにいらっしゃる学部学生の皆さんの多くは、2022年4月に入学されたので、新型コロナウイルス感染症の拡大のため、ご家族の皆様が入学式に出席いただくことが叶いませんでした。本日、こうして、ご家族の皆様をお迎えして学位記授与式を挙行できますことをとても嬉しく思っております。
皆さんが、入学された時、対面の授業はほぼ復活していましたが、課外活動が制限され、同期や先輩との繋がりが希薄になりがちな大学生活のスタートだったのではないでしょうか。今日、皆さんは様々な困難を乗り越えて学位記を手にしますが、どうぞ自分自身を誇りに思ってください。私も皆さんのことをとても誇りに思います。
皆さんの大学生活を締めくくる2025年度には、様々な出来事がありました。日本気象協会によれば、昨年の夏は歴代最高の猛暑でした。また、人の居住区域に多くの熊が現れて人々の生命が脅かされ、亡くなられた方もいました。12月には、青森県東方沖地震が発生し、八戸市を中心に甚大な被害がありました。これらは、自然との向き合い方の難しさを感じさせるものでした。
一方、インフレと株高が加速するなか、実質賃金は必ずしも上昇せず、経済的な格差が進んだと言われています。また、7月の参議院選挙や2月の衆議院選挙ではソーシャルメディアを通じた情報の拡散が力を発揮した一方で、偽情報が深刻な問題となりました。
世界に目を向けるとガザの復興は未だ先の話であり、ロシアによるウクライナ侵攻は未だ終結に至っていません。いわゆるトランプ関税が世界中を混乱させ、一時、米国がグリーンランドを自らが領有すべきだと主張していました。そして、今年の2月末、米国とイスラエルによるイランへの本格的な攻撃が開始され、子供を含む多くの死者が出ています。これら国内外で起こったことは、皆、社会の分断を加速する出来事と言えるかもしれません。
本学の建学の精神は、「輝ける者を育む」です。「輝ける者」とは、自立した力を持ち、他者とかかわり合いながら未経験の問題に応える人です。皆さんが、自分と異なる考え、立場、あるいは背景を持つ人々を排除するのではなく、むしろかかわり合うことで課題の解決を模索し、この不確実性に溢れる社会をより良いものにするために貢献していくことを願っています。
さて、4年前の入学式で、私は「grit」についてお話しました。スペルはg・r・i・tで、日本語では「やり抜く力」と訳されています。皆さん、覚えているでしょうか。
アンジェラ ダックワースという米国の著名な女性心理学者が書いた、そして神崎朗子(あきこ)という方が翻訳した本を紹介しました。ビジネスリーダーや起業家にとって必読書の一つとされているようです。その結論はビジネス、科学、芸術、スポーツなどどんな分野においても、いわゆる「成功している人」は、学歴や知能指数、才能に恵まれているのではなく、「やり抜く力」、つまり長期的な目標を達成するための「情熱」と「粘り強さ」を持っているというものです。この「やり抜く力」は生まれ持った性質ではなく、何歳でも獲得でき、向上させることもできると著者は主張しています。
皆さんは大学生活を通じて「やり抜く力」を発揮できたでしょうか。充分に発揮できたと思う方も、あまり発揮できなかったと感じる方もいるでしょう。あまり発揮できなかったと思う皆さんは卒業を機にひとまず気持ちを切り替えて、4月からの新天地で挑戦してみるのはいかがでしょうか。
ところで、ダックワース博士は、最近、Master of Scaleというポッドキャスト番組の中で、grit、すなわち「やり抜く力」だけでは、成功するには十分ではないと自らの体験を紹介しながら話しています。実際のところ彼女は、研究者として仕事をこなしながら、多忙な夫と世話が必要な二人の子供と暮らすなかで、とても大きなストレスを抱えていた時期があったようです。ダックワース博士がこの状況を乗り切るのに必要になったのは、サポートしてくれる仲間、味方であり、困難な状況におけるチームの重要性を強調しています。他者とかかわり合うことの大切さがここでも謳われていると言えます。
結びに、昨年の学位記授与式でもお伝えしたことですが、皆さんの多くはこの東北に生まれ、あるいは東北で育った方だと思います。そうでない方も学部学生は4年間、大学院生は2年間または3年間、この仙台の国見の丘で学ばれました。本学は、その教育理念のなかで地域社会への貢献を掲げています。これから引き続き東北で活躍される方は、若者の流出など様々な課題を抱えるこの地域の課題解決に貢献していただきたいと思います。また、東北を離れる方も是非、東北という二文字を心に刻んで、この地域を応援していただきたいと思います。これからも皆さんが東北に誇りを持ちながら真の「輝ける者」に成長することを願い、私の式辞とします。本日は、誠におめでとうございます。
2026年3月13日
東北文化学園大学
学長 加賀谷 豊