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研究内容の紹介

研究内容

トップページに示した抗感染症薬(抗生物質、抗ウイルス薬、ワクチン等)の臨床開発以外に下記の4つの研究を行っています。

1.感染症原因菌のサーベイランス、及び薬剤耐性菌の分布と耐性機序の解明

 AMR(抗菌薬耐性菌)対策が国の大きな指針となっている中、各種感染症の原因菌、特にAMRの分布・頻度を明らかにし、未解明の新たな耐性機序を明らかにすることは重要です。
私は、全国の大学病院・基幹病院・第一線病院等で分離される各種病原細菌を収集し、薬剤感受性を測定する3学会(日本化学療法学会、日本感染症学会、日本臨床微生物学会)合同抗菌薬感受性サーベイランス事業の実施責任者を担ってきました。特定少数の病原細菌以外では耐性の増加が見られないことなどを確認・報告して参りました。

2.新型を含むインフルエンザ感染症の治療並びに予防に関する基礎的・臨床的研究

 予想される新型インフルエンザ感染症や従来からの季節性インフルエンザ感染症に対する最適の治療方式を確立し、併せて予防効果の解明を通じてわが国と世界のインフルエンザの疫学を改善し、さらに、新規の抗インフルエンザ薬を開発することは重要です。
前記複数の学会の委員会委員長や厚生労働省の委員として2009年以来、10を超える提言・ガイドラインの発出を主導してきましたが、これらが評価されて2013年第65回保健文化賞及び2017年日本化学療法学会第28回志賀 潔・秦 佐八郎記念賞を受賞しました。

3.非結核性抗酸菌(NTM)症の治療反応性の差異に関わる分子遺伝学的解析

 非結核性抗酸菌(NTM)症の患者は2000年代に入って間もなく、同じ抗酸菌症に属する結核を抜いて急増中ですが、内外で提唱されている標準治療に対する反応が1例ごとに大きく異なったり、無治療でも安定している群がある一方、いかなる治療にも反応せず増悪・死亡したりする群まで様々です。
これまでは、その拠って来る理由を宿主(=患者)側の要因で説明しようとする考えが多かったのですが、我われは、患者に感染している菌自体にその要因があるという仮説からVNTR解析などの分子遺伝学的解析を行い、それを肯定する一定の知見を得たところであり、グループからは日本結核病学会今村賞受賞者が出ました。

4.生物学的製剤投与に伴う副作用として多数発生している各種感染症の効果的な抑制

 世界の医薬品市場のトップテンのうちの7剤ほどはいずれも生物学的製剤です(日本はまだそこまでは行っていません)。
リウマチや乾癬、クローン病や潰瘍性大腸炎、ベーチェット病、川崎病などの免疫性炎症性疾患に対する画期的な治療薬として21世紀に入って登場した生物学的製剤は、前の週には車いすで外来に来られた方が翌週にはスタスタ歩いてくるなど目覚ましい効果を上げていますが、一方で結核や肺炎、ニューモシスティス肺炎などが併発し、死亡例も見られます。
どのように安全に使用するのかが大きな命題ですが、主にリウマチ患者を対象とする各種の臨床試験に参加し、その成果を海外学術誌等に発表すると共に、学会の手引書等を発刊して感染症予防策を確立することにより治療効果の向上を図って参りました。また、新規生物学的製剤の開発にも主体的に参加して参りました。

5.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する基礎的・臨床的研究

 2019年末に出現して世界的なパンデミックを呈している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、いち早く実用化された種々の種類のワクチンの使い方に学問的見地からの実際的なサポートが必要であり、その見解を確立していく必要があり、一般の方へ向けたネット上のサイトなどで発信しています。治療薬では、患者が最も多く、かつ中等症~重症の症例が発生する母地となる軽症例に対する薬剤、特に経口薬が重要不可欠ですが、臨床開発が進行中の国産の3CLプロテアーゼ阻害薬の臨床試験において臨床評価委員(安全性担当)を務めており、高い臨床効果並びに高い安全性を兼ね備えた治療薬を実用化すべく努力しているところです。

研究室および関連研究グループ

研究室
特任教授 渡辺 彰

研究グループ
菊地利明(新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸器・感染症内科学分野 教授)
藤村 茂(東北医科薬科大学大学院薬学研究科臨床感染症学教室 教授)
五味和紀(東北大学大学院医学系研究科呼吸器病態学分野、米国コーネル大学留学中)
中野禎久(茨城キリスト教大学看護学部看護学科老年看護学 講師)

関連グループ
本田芳宏(仙台厚生病院 診療管理者・前院長)
徳江 豊(群馬大学医学部 准教授, 感染制御部部長)
三木 誠(仙台赤十字病院 副院長・呼吸器内科部長)
高橋 洋(坂総合病院 副院長・内科診療部長)