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リハビリテーション学科理学療法学専攻の教員の研究が国際的な研究誌に掲載されました

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 医療福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻 沼田 純希 助教らの研究成果「Temporal synchronization for in-phase and antiphase movements during bilateral finger- and foot-tapping tasks(日本語訳:手指および足部タッピング課題における同位相性および逆位相性運動の時間的同期)」が、国際学術誌 Human Movement Science に掲載されました。

 医療福祉学部 理学療法学専攻の沼田助教、工学部の古林俊晃 教授らの研究グループは、中枢神経系の時間情報処理機構の研究に取り組んでこられた杏林大学 医学部の寺尾安生教授、小脳や大脳基底核に由来する不随意運動の研究に取り組んでこられた福島県立医科大学 ヒト神経生理学講座の宇川義一教授、歩行の研究に取り組んでこられた神奈川県立保健福祉大学の菅原憲一教授らとの共同研究により、下肢のリズム再生機構が手指とは異なる制御をしていることを見出しました。

 そもそもリズム再生機構は、運動を制御する領域と関連が深いことが知られています。これまで寺尾教授、宇川教授、古林教授らの研究グループが大脳基底核や小脳に異常をきたす疾患と時間情報処理機構に関する研究に取り組んでこられた中で手指による時間再生課題を用いていましたが、沼田助教は、理学療法士として、これを応用し、下肢のリズムの取り方と歩行運動との関係性を調べることで、歩行のリズムを上手く取れない神経系疾患に対するリハビリテーションへの応用ができるのではないかということに着目し、研究を重ねてきました。

 パーキンソン病や小脳疾患、脳卒中などの神経系疾患のある患者さんは、信号が変わるまでに道路を渡り切れない、人と速度を合わせて歩けない、歩く速度をうまく調整できないなど、歩行のタイミングをうまくはかれないという、疾患の特性がある方が目立ちます。例えば、パーキンソン病は大脳基底核の機能が低下し、時間をうまく測れなくなることが知られており、そのリハビリテーションの方法は大きな課題となっています。

 今回の研究は、足でのリズムの取り方について研究を行うことで、手と足のリズムの取り方の違いについて、特性を明らかにするものです。
実験を受ける対象者には、一定のリズムを聞きながら足を使って3種類のリズム(①左右交互②左右同時③片方だけ(利き足のみ))をとってもらいました。
それぞれの場合で計測を行い、どのような違いがあるかを計測しました。また、手と足でも違いがあるかを調べました。

 その結果、「足は左右交互運動で一定のリズムを保つのが得意である」ということが判明しました。一方、手には交互運動が得意であるという差は現れませんでした。
この結果から、人間の脳には、”足で”歩行のような交互運動をすることを得意とする神経基盤があるのかもしれないと、沼田助教は推測しています。

 理学療法士は、リハビリテーションによる患者さんの症状回復の把握のため患者さんがどの程度よくなったのか、それとも悪くなったのかをリハビリテーションを行う前と後の数値により判断しています。
このような数値での記録を、理学療法士は「評価」と呼んでいます。

 これまで、神経疾患の患者さんは、頭の中で「時間をうまく測れない」という能力低下があるのではないかと推測されていましたが、そのような患者さんを評価する方法は確立されていませんでした。
歩行のリズムをとる上手さを評価できるようになることで、神経系疾患の患者さんの評価に合わせた効果的なリハビリテーションの手法が発展する可能性も考えられます。
さらには、時間情報の処理能力を評価して治療するというツールにまで発展できるのではないかと期待しています。

沼田助教の目標は、リハビリテーションを通じて患者さんの困り感の解消に貢献すること。研究のさらなる進展を楽しみにしています。


■掲載された論文はこちら
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0167945722000471

■関連link
教員紹介ページ「沼田 純希 助教」
教員紹介ページ「古林 俊晃 教授」
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