主な論文
■Implicit estimation of sound-arrival time (共著), Nature, 421(6926), p.911 (2003)
1~50mの距離においた小光源と両耳に与えた短音が同時に到来したと判断されるときの時間差を心理物理学実験によって求めました。その結果,光源の距離が2,30mまでは,音を音速に相当分遅らせたときに同時と感じられることを明らかにしました。これは脳が音の伝搬速度を暗黙のうちに学習,利用しているためと考えられます。
■Effects of head movement on front-back error in sound localization(共著), Acoustical science and technology, 24(5), pp.322-324. (2003).
バイノーラル聴覚ディスプレイを用いて合成したバーチャル音空間を用いて,頭部運動に対応した信号処理の有無による音空間知覚実験の結果から,頭部運動に対応した音情報を提示することが音空間知覚に多大な効果を持つことを示しました。
■Equal-loudness-level contours for pure tones (共著), J. Acoustical Society of America, 116(2), pp.918-933 (2004).
等ラウドネスレベル曲線は周波数の異なる音が同じ音の大きさ(ラウドネス)に聞こえる音圧レベルを結んだ等高線で,聴覚の基礎特性です。この論文では,多くの研究結果(自身のものを含む)にラウドネス知覚モデルを適用し,新しい等ラウドネスレベル曲線を与えました。この成果は2003年に全面改定された国際規格(ISO226)に活用され,いまも使われ続けています。
■Comparison of the effects of verbal versus visual information about sound sources on the perception of environmental sounds. Acta Acustica united with Acustica, 92(1), pp.51-60 (2006).
環境騒音の評価に,言語情報と映像情報が与える影響を検討しました。その結果,騒音源が何を示す情報が重要であることを示しました。また,言語情報と映像情報が与える影響には差異があり,それが環境騒音のイメージの違いによると考察しています。
■臨場感の素朴な理解 (共著), 日本バーチャルリアリティ学会論文誌, 15 (1) pp. 7-16 (2010).
大学生,大学院生約200名を対象に,「臨場感」をどのように理解しているか調査しました。その結果,「あたかもその場所にいるよう」という辞書的意味のみならず,感動を呼ぶ実世界の現象という複数の理解があること,聴覚,視覚が強く関与すること等を明らかにしました。
■Effect of word familiarity on word intelligibility of four continuous words under long-path echo conditions (共著), Applied Acoustics, 124, pp. 30-37 (2017).
防災無線のような屋外拡声音を聞く場合,大きな時間差を持った音(ロングパスエコー)は音声の理解を妨げる大きな要因です。この論文では,文章に用いられる単語として,なじみのある単語(親密度が高い単語)を用いると音声の理解が高まることを示しています。
■音から生成した全身振動の周波数特性が高次感性に与える影響 ―多感覚情報の高次感性を定める要因の解明を目指して― (共著) 日本バーチャルリアリティ学会論文誌, 26 (1),pp. 62-71 (2021).
音・映像情報に全身振動情報が加わると臨場感が高まることが知られています。しかし,ほとんどの情報コンテンツには振動情報が含まれていません。この論文では,音から作成した振動情報でも臨場感や迫真性などの高次感性が高めうることを確認し,それがどのような要因によるのかを検討しています。
上に示したものも含めて,私の論文のほとんどは
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主な著書■ 音のなんでも小辞典 (共著)講談社(1996)
■ 超臨場感システム (共著)オーム社(2010)
■ 音響学入門(日本音響学会編,共著)コロナ社(2011)
■ 聴覚モデル(日本音響学会編,共著)コロナ社(2013)
■ 基礎音響学(日本音響学会編,共著)コロナ社(2019)
■ The Technology of Binaural Understanding (共著) Springer (2020)
■ 聴覚(日本音響学会編,共著)コロナ社(2021)