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平成27年度東北文化学園大学・大学院入学式が挙行 されました

イベント
東北文化学園大学・東北文化学園大学大学院 学位記授与式 
平成27年4月4日(土)平成27年度東北文化学園大学・大学院入学式が挙行されました。

平成27年度東北文化学園大学・東北文化学園大学大学院
入学式 訓辞

蔵王の山々はまだ雪の中です。今年の桜前線は順調に北上し、ここ国見の丘でも来週には桜が開花しそうです。希望に満ちた今日この良き日に、みなさんを国見のキャンパスにお迎え出来ることを、教職員一同、心から嬉しく思っております。

  ただ今、3学部6学科、計456名、3年次編入学15名および大学院博士課程前期12名、総数483名の新入生に入学許可宣言をいたしました。

 本日晴れて入学を認められた新入生の皆さん、御入学誠にお目出とうございます。この日を待ちわびておられた保護者の皆さまのお喜びはひとしおのことと存じ上げ、心からお祝いを申し上げます。

 本学は平成11年に開学して以来、本年3月までに13期にわたる卒業生を送り出し、本日は17期にあたるあなた方をお迎えすることになりました。医療福祉、総合政策、科学技術という医療福祉系、文系、そして工科系による3学部は、各学部の専門性を高める努力とともに、学部間の連携を強化し、来るべき少子高齢化社会に向けた、新しい科学の創出と独自の政策提言を行うべく日々努力しております。また、医療福祉系の大学としての完成度を高めるために、平成28年度から科学技術学部に臨床工学科を新たに設置し、学生募集を開始すべく、準備をしているところです。

 さて、大学生活を始めるにあたって、是非学長から皆さんにお伝えてしておきたいことがあります。それは、努力をしなければ、何ものも得られないというごく当たり前の原則です。大学を卒業するときには、社会人としての一定の水準が求められています。国家試験に合格しなければ仕事ができない医療系の多くの専攻・学科では、その水準が厳密に決まっています。工科系・文系の学部・学科でもディプロマポリシーに従い、皆さんにそれなりの価値を付加して社会に送り出さなければなりません。そのためには、皆さんは、毎日の生活の中で学習時間をしっかり確保する必要があります。特に、入学後2~3か月の大学生活が重要です。教職員はこの間、大学生としての心構え、大学生活において守るべきルール、授業を聴講する方法、ノートの取り方を含めて、丁寧に皆さんに大学での学び方を伝えます。是非、この期間を休まず講義やガイダンスに出席し、教職員と話し合う習慣、友人と語り合う喜びを見つけ、キャンパスライフに馴染んでいただきたいと思います。アルバイトの時間やスマートフォンと向き合う時間も、しっかり自分でコントロールしなければなりません。保護者の方も、この時期、子供さんと大学生活について話し合う機会をできるだけ多く持っていただき、学習に対する意識や将来に対する夢を語り合っていただけませんでしょうか。学習成果を得るためには、時間をかけることが欠かせない条件です。どうぞよろしくお願いいたします。

そのような皆さんの学習を支援するために、今年の3月に1号館地下1階の学生ホールを改装し、教育支援センター、略してEサポを移転させました。このEサポには同時にラーニングコモンズの機能をもたせています。これによって、ITを活用した少人数のグループ学習を並行していくつも行うことが可能となり、また、サポートスタッフによる学習支援などの体制も整えました。快適な学習支援空間ができましたので、是非有効な活用をお願いいたします。

私たちの大学では、学部の枠を超えた共通教育プログラムを重視しています。その中で特に力を注いでいるのが、TBGUプロジェクトI「輝ける者」です。この輝ける者プロジェクトは、仙台フィルハーモニー管弦楽団と第一級の指揮者の指揮のもとに、ベートーベンの第九交響曲合唱を歌います。4月から11月の演奏会までべートーベンやシラーの詩に関する様々なことを学びながら、第一線の合唱指導陣から、合唱の指導を受けます。最後までやり遂げた学生諸君の充実感・達成感には素晴らしいものがあります。沢山の学生が自由選択でこのプログラムに参加しています。是非この感動を味わっていただき、また、ご家族の方と分かち合って欲しいと願っています。Eサポは、ほかにもいろいろなプログラムを用意しています。「てつがくカフェ@TBGU」、「朝カフェ」、「社会を見る目を養おう」、「児童文学作品から学ぶ人間学」、「足元の郷土学」などです。「てつがくカフェ@TBGU」は、「働くことの意味」「教養とは」「愛とは」「『人間らしい死』とは」と言ったテーマを学生や教職員という枠を取り払い、対等の立場で議論をする場です。考える充実した時間がゆっくり流れて行く、誠実でとても心地よいひと時を過ごせます。さらにTBGUプロジェクトⅡ「地域活動・ボランティア」は、積極的にボランティア活動を行い、社会貢献の在り方を学びます。教職員は、皆さんの参加を常に大手を広げて待っています。大学は、自分から飛び込んで行かなければ何も学ぶことはできません。どこからでも結構ですから、まず一歩を踏み出し、飛び込んでからもう一度考えてみてください。このようなプロジェクトを通じて、皆さんに社会に巣立つための自覚を早くから持ち、人生のこと、人間のことを考えながら、大学生活を有意義に、思い切り楽しんでいただきたいと願っています。

 さて、入学式のお祝いとして、皆さんに児童文学の範疇に入る1冊の本を紹介させていただきます。庄野英二という人が書いた「星の牧場」という本です。私もちょうどみなさんぐらいの時にこの本を知って以来、私にとっての星の3部作、すなわちサン・テグジュペリの「星の王子様」、宮沢賢治の「よだかの星」、そして「星の牧場」は、私の人生の傍らに常にあった童話です。簡単に内容をお話します。戦時中に愛馬ツキスミとともに戦地に赴く途中、モミイチが乗った船は撃沈されてしまいました。モミイチは九死に一生を得たのですが、記憶は失われてしまいました。ツキスミはどこでどうなったのかどうしても思い出せないのですが、モミイチには常にツキスミの蹄の音が幻聴のように聞こえていました。故郷の牧場に戻ってきたモミイチは、牧場の仲間たちからは言葉数の少ない変人と思われていました。でも心の中はまったく別でした。蹄の音が聞こえてくると、モミイチの会えなくなったツキスミへの思いはますます募り、とうとう現実の世界とファンタジーの世界が交錯し、モミイチのツキスミ探しの旅が始まります。森の鹿道のような小道を通ると、季節によってマツムシソウ、コザクラソウ、キキョウ、ツルウメモドキ、ワレモコウやリンドウが咲き乱れる花畠があり、あるいはキベリタテハとクジャクチョウの大群に出会い、そこがファンタジーの世界への入り口を象徴しています。ツキスミ探しを始めたモミイチは、親身に話を聞いてくれるジプシーたちと次から次に友達になります。かれらは、みな楽器の愛称を持つオーケストラの団員でした。そこではだれもモミイチのことを変人だとか、病気だとか思う人はいません。ジプシーたちの奏でる音楽は、モミイチのツキスミに対する思いをますます募らせ、最後にとうとう、星屑の砂を蹴散らしながら星空を疾駆するツキスミに出会うことが出来るのです。全体に大変色彩感のある童話ですが、最後のツキスミとの出会いの描写は圧巻です。

 庄野英二は、ツキスミの蹄の音を、「ポッコリポッカ」と書いています。この蹄の音が通奏低音のようにこの童話を流れていて、その音に耳を澄ますモミイチが、さまざまな出会いを通して、ツキスミとの再会に至る物語です。私は、この蹄の音は、本当は誰の心の中にも流れているのではないだろうかと思うのです。モミイチは、豊な感受性に恵まれていたので、自分の中の蹄の音に気づき、その音に耳を澄ましてツキスミを探したからこそ、その過程で友との出会い、音楽との出会い、そして最後にツキスミとの出会いがあったのだと思います。皆さん、どうか耳を澄まして皆さんの心の声を聴いてください。そして自分の心が語り掛けているものが何かを探してください。私は、それが恐らくこれからを生きて行く皆さんの、「今」しなければならないことなのだと思います。そして、皆さん一人一人にとっての、特別な「ツキスミ」を見つけてください。

 それでは、この訓辞をそろそろ締めくくりたいと思います。私達の学園歌はさとう宗幸氏作詞作曲によるもので、そのタイトルは、「輝ける者」です。この「輝ける者」はまた、私達の大学の求める理想的な人間像を一言で言い表したシンボルワードでもあります。皆さんが「輝ける者」として力強く社会に羽ばたいて行く日を、教職員一同、皆さんに寄り添いながら見守り、そして支えて行きたいと思います。

平成27年4月4日     
東北文化学園大学   
学長 土屋 滋