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総合政策学部 総合政策学科

ロングライド最下位完走の感想

2018.11.05
総合政策学部専任講師 淡路智典


 例年参加している佐渡ロングライドに今年も参加した。そこで得難い経験をしたので、そのことについて書きたいと思う。過去の国見テラスでも書いたが、佐渡ロングライドとは、毎年5月に佐渡島で行われるイベントで、半日かけて佐渡島1周210kmをロードバイクで走るものである。

 普段から練習をしているライダーと違い、練習をサボりがちな私は例年制限時間ぎりぎりのところで完走していた。しかし、今年は不運なことに落石のためにコース変更があり、普段よりも高低差が多い、つまり坂道が多いコースになっていた。スタート前から、完走を危惧していたが、悩んでいても仕方がないので、意を決して走り出した。

前半100kmは気分良く問題なく走れたが、コース変更があり高低差が多くなっているのは小佐渡と呼ばれている後半部分である。コース変更部分は普段のコースに比べ、明らかに道幅も狭く登りも急で、とにかく辛い区間だった。いつものコースは海沿いで見晴らしも良く爽快に走れるのだが、変更区間は初めて走るうえに森の中を抜けるようなコースのためどこまで登れば坂が終わるのかもわからず、ひたすら耐え忍ぶ区間だった。

 何とか変更区間を抜けたが、次の問題がすぐに待ち構えていた。制限時間である。佐渡ロングライドは順位を競うレースではなく、完走を目指すタイプのイベントであるが、交通規制やスタッフやボランティアの配置等の関係上、制限時間が定められている。210kmのコースの場合、約20kmごとにあるエイドステーションという休憩場所で制限時間が決められており、最終的に12時間以内にゴールしなければならない。スタートから一定時間経つと、回収車が走りはじめ、それに追いつかれると原則的にリタイアとなる。

コース変更区間を抜けた時点でエイドステーションごとの制限時間ギリギリであった。余裕があれば、軽食をとったり小休憩をしたりするのだが、もはやそんな余裕はなかった。ボトルに水を補給してもらって、すぐに走り出す状況となった。

 最後にあるエイドステーションはスタートから185km地点にあるのだが、そこの制限時間は16時30分であり、到着したのも16時30分であった。実際には1分程度遅れていたように思えたが、スタッフの人に「このまま進んでいいですか?」と尋ねたら、笑顔でGOサインを出してくれたので、おそらく大丈夫であったのだろう。

 ラスト25kmで18時までにゴールすればよいので、問題なく行けると思ったのだが、ここで大きな逆風にあった。比喩ではなく本当の逆風である。ラストは海沿いに出るので遮蔽物が全くないため(だからこそ景色が綺麗ではあるのだが…)、風に向かって走ることになる。すでに190km近く走ってなければ、がむしゃらにペダルを踏んで乗り切ることもできるだろうが、練習をサボりがちな私はこの時点でスタミナが完全に切れており、ヘロヘロになりながら進んでいた。今のスピードと時間から考えると完走が難しいかなと思っていると、スタッフの方から声をかけられた。回収車にロードバイクで並走するスタッフだった。現時点で200km過ぎだったが、時間は制限時間の18時であった。ラスト10kmだったので、完走扱いにならなくてもいいので、このままロードバイクでゴールまで行かせてもらえないか尋ねた。そうしたらスタッフの方は、快く本部に連絡してかけあってくれた。警備とかの関係もあるので佐渡の警察の方が許可を出してくれれば本部としては大丈夫とのことだった。数分後連絡が来て、許可が出たのでこのままロードバイクでゴールまで走ってよいことになった。

 すでに疲労困憊ではあったがスタッフの方が風除けとなって先導してくれて、何とかゴール近辺までたどり着くことができた。ゴール地点ではすでに撤収作業が始まっており、スタート・ゴールを示すアーチも撤去されていた。しかし、アナウンサーを始めとするスタッフの方は残っており、制限時間を過ぎて入ってきた私をラストライダーとしてコールして出迎えてくれた。

ちなみに、完走後は疲労困憊で動けず道の端で、どうやって宿まで帰るか思案にくれていたところ、回収車を運転していたスタッフの方が声をかけてくれた。ラスト10kmを並走していたので、疲労困憊具合を察してくれたようであった。スタッフの方はスコットというスポーツメーカーの方で、撤収の途中でよる形でよければ乗っていくかいと言ってくれた。すでに日も暮れ始め体力も尽きていたので、お言葉に甘えさせていただいた。

 途中リタイアという苦い思い出になるかと思った今回のロングライドは、色々な人の配慮によって最下位完走という暖かい思い出になった。毎年、ボランティアスタッフや道端で応援している観客の人達から力をもらっていたが、今回は特に多くのものをもらったように感じる。

 最後に謝辞を。制限時間を越えているにもかかわらず走ることを認めてくれた大会本部と佐渡の警察の方々、本部に掛け合いラスト10kmを先導してくれたスタッフの方、同じくラスト10kmを並走して最後宿にまで送ってくれたスコットの方々、本当にありがとうございました。