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総合政策学部 総合政策学科

2017年は東北の食材が広がる年に

総合政策学部教授 矢口 和宏


もう数か月前のことであるが、昨年の10月下旬に、北海道の函館で私が所属している学会が開催された。この学会は、例年春に国内大会を行い、秋には国際大会を開催する。そのため、このたび参加したのは国際大会であり、外国人研究者も数多く参加した。通常、学会はテーマを定めたシンポジウムや研究者による研究報告が行われる。研究に関係することだけではなく、期間中には夕食を兼ねた懇親会が開催されることも多く、今回の学会でも1日目の夜に懇親会が開催された。

懇親会のテーブルには函館で獲れた海産物を用いた料理が出され、それはたいへん美味なものであったが、一番人気のあったメニューは青森産の日本酒であった。まさか函館で青森の日本酒が卓に出されるとは思わなかったが、多くの研究者が試飲している様子がみられた。特に、外国人研究者が興味深そうに試飲している姿は印象に残るものであった。いまや外国人が箸を使って日本食を嗜む姿は当たり前のようになってはきているが、外国人がワインの代わりに日本酒を嗜んでいる姿は興味をひかれるものであった。

近年、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されるなど、世界的な日本食ブームが起きている。それと同時に日本酒に対する評価も高まっており、日本酒が高級白ワインと並べられるようになってきている。そのことをふまえれば、私が懇親会の場で見た姿は珍しいものではないかもしれないが、日本酒、特に酒どころ東北の新しい発展形をみたような気がする。実際、その様子は統計からもみることができる。

国税庁仙台支局によれば、東北の清酒輸出免税数量を公表しているが、それによれば、1999年度の輸出免税数量は116キロリットルであったが、7年後の2006年度には500キロリットルを超えた。その後も輸出免税数量は増え続け、2013年度には940キロリットルとなっている。東北地方の多くの経済統計は、震災の年に大きな減少を伴うものが多いが、清酒輸出免税数量は2012年度に一時的な落ち込みはあったが、増加傾向が続いている。

さらにその学会では、青森つながりで、青森リンゴの人気についてもいい話を聞いた。台湾からきた研究者が言うには、台湾国内において、青森りんごの大きさ、色、味、形の評価は高く、贈答用商品として人気が高いという。北海道にいるのに、なんで青森の話題になるのだろうと不思議な感じがしたが、東北の食材の広がりを実感する機会となった。

昨年は、8月末の台風10号による水害や、いまだ続く原子力発電所事故に関わる福島県出身者へのいじめなど、東北地方にとっては厳しい年であった。そんな状況でも震災からの復興は進めていかなければならないのはいうまでもない。日本酒やリンゴは小さな突破口からもしれないが、それらを通して東北の食の安全性を内外にアピールし、2017年は東北の食材がより広がることを祈っている。