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総合政策学部 総合政策学科

ピタゴラス勝率

総合政策学部准教授 河本 進

 

春になり、今年もプロ野球が開幕した。本学がある仙台市を本拠地とする東北楽天ゴールデンイーグルスは、開幕から5カード連続して勝ち越し、12試合を消化した時点で10勝2敗(勝率0.833)という好スタートを切った。対照的に、我が中日ドラゴンズは、開幕から5カード連続で勝ち越しなく、14試合を消化した時点で3勝9敗2分(勝率0.250)という厳しいスタートとなった。

プロ野球の公式戦では、勝敗の記録は当然であるが、得点・失点・安打数・本塁打数・三振数など様々な統計データを公式記録として記録している。ビル・ジェームズは、1977年から出版を始めた著書『Baseball Abstract』シリーズにおいて、統計学などを駆使して公式記録の様々な分析を行った。ビル・ジェームズは、野球の客観的見地からの調査研究をアメリカ野球学会の略称「SABR」と測定を意味するmetricsをつなげた造語「セイバーメトリクス(SABRmetrics)」呼び、セイバーメトリクスを用いた客観的な分析が選手の評価、チーム力の強化に重要であることを提唱した。当初、あまり注目されたかったセイバーメトリクスであったが、2003年にマイケル・ルイスが著書『マネー・ボール』で、オークランド・アスレチックスのビリー・ビーンGMがセイバーメトリクスを用いて低予算でプレーオフ常連の強豪チームを作り上げていく様子を描いたことにより、広く知られようになった。

プロ野球のチームは優勝を目標にチームを編成しているが、プロ野球における順位は、引分を除いた試合の勝敗数を用いて計算した

      勝率=勝数÷(勝数+敗数)

で決められる。また、1つの試合における野球の勝敗は、言うまでもなく得点を多く取ったチームの勝利となる。言い換えれば、得点-失点がプラスならば勝利で、マイナスならば敗北になる。そこで、ビル・ジェイムズは総得点と総失点が勝率に与える影響を分析して、ピタゴラスの定理を模した簡単な計算式

ピタゴラス勝率=総得点×総得点÷(総得点×総得点+総失点×総失点)
を考案した。ピタゴラス勝率を用いることで総得点と総失点から勝率を予測できるので、勝率がピタゴラス勝率を大きく上回っていれば、シーズンを通して接戦のゲームを上手く勝ち切っていると言え、反対に、勝率がピタゴラス勝率を大きく下回っていれば、接戦のゲームを落としていると言える。まだ、今シーズンは始まったばかりだが、楽天は5カード12試合を消化した時点での総得点が65点、総失点が51点、ピタゴラス勝率が0.619である。また、中日は5カード14試合を消化した時点での総得点が35点、総失点が54点、ピタゴラス勝率が0.296である。つまり、楽天は得失点力以上に試合を勝ち切り、中日は試合を落としていると思われる。しかし、ペナントレースは始まったばかりである、シーズンの最終結果はどうなるのであろうか?仙台の地で楽天と中日の日本シリーズを観られることを期待している。