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総合政策学部 総合政策学科

勝率予測式

2018.6.22
総合政策学部准教授 河本 進

 今年のプロ野球セ・パ交流戦が6月21日に終了した。本学がある仙台市に本拠地を置く東北楽天ゴールデンイーグルスは、昨年とは一転して開幕から調子が上がらず、交流戦終了時点でパリーグ最下位であるに沈んでおり、勝敗差数がマイナス20になった6月16日には、梨田昌孝監督が成績不振のため辞任した。我が中日ドラゴンズも、交流戦終了時点で僅差ではあるがセリーグ最下位であり、厳しい前半戦を送っている最中である。しかし、まだ前半戦も終了していない段階での成績である。両チームにはリーグ優勝は無理でも、クライマックスシリーズ進出を目指して戦ってもらいたい。
 2017年4月20日付の国見テラスで、総得点と総失点からピタゴラスの定理を模した簡単な計算式
    ピタゴラス勝率=総得点×総得点÷(総得点×総得点+総失点×総失点)
を用いることで、
            勝率=勝利数÷(勝利数+敗戦数)
を予測できることを紹介したが、本稿では、過去のシーズンの結果から、
               得失点差=総得点-総失点
を説明変数に用いた計算式で、
               勝敗差数=勝利数-敗戦数
を統計的に予測する方法を紹介する。プロ野球は勝率で最終順位を決定しているので、勝敗差数を予測しても意味がないように感じるかもしれないが、引分の試合が無ければ、
            勝率=0.5+勝敗差数÷(2×試合数)
で計算できる。したがって、引分の試合が無ければシーズン終了時の試合数は決まっているので、シーズン終了時の勝敗差数が予測できれば最終勝率も予測できるのである。
 下記のグラフは、東北楽天ゴールデンイーグルスの球団創立後の最初のシーズンである2005年から2017年までの13シーズンの全12球団の得失点差と勝敗差数の関係を視覚的に把握するために、各年の全12球団の得失点差と勝敗差数の対になったデータを横軸に得失点差、縦軸に勝敗差数をとって打点したものである。



 このグラフを見ると、打点したデータは右肩上がりの直線を広げた形状に分布してことが分かる。つまり、得失点差が大きいときは高い勝率になっていて、得失点差が小さいときは低い勝率になっている。それでは、この分布の仕方を説明するのに、得失点差から勝敗数差をどのような直線を用いて説明するのがふさわしいであろうか?その答えの一つを与える方法として、統計学には回帰分析という分析方法がある。今回、グラフ上のデータに対して回帰分析を行ったところ、得失点差を説明変数にした勝敗差数の予測式
              勝敗差数=0.20×得失点差
を得ることができた。この予測式より、得失点差が5点変化すると勝敗差数が概ね1変化することが分かる。この予測式と1シーズンの試合数である143を
            勝率=0.5+勝敗差数÷(2×試合数)
に代入することで、シーズン終了時での勝率予測式
         勝率=0.5+0.00070×(総得点-総失点)
を得ることができる。それでは、この勝率予想式で計算される勝率とピタゴラス勝率とでは、どちらが実際の勝率に近い値を計算することができるのであろうか?興味を持って頂けたら日本プロ野球機構ホームページで公式記録を調べて計算して欲しい。