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総合政策学部 総合政策学科

ニューヨーク体験記

2019.3.5
総合政策学部准教授 立花 顕一郎


 今年(2019年)の2月中旬にニューヨークのパブリック・ライブラリーに資料調査に行ってきました。アメリカを訪れるのは今回が初めてではなく、20年以上前に留学生としてシカゴに住んだ経験もあります。しかし、ニューヨークは今回が初めてでしたのでいろいろと戸惑うことや不思議に思うことが予想以上にたくさんありましたので、今回はそのことについて書いてみようと思います。

 まず、一番驚いたことは、自分で思っていた以上にニューヨーカーの英語が聞き取れないということでした。ニューヨークは世界的な都市であるだけあって、さまざまな国から旅行で来た人や移民してきた人が本当に千差万別のお国なまりで英語を話しています(私自身も日本語なまりの英語を使っているのは言うまでもないことですが)。飛行機の長旅をようやく終えて、JFK国際空港に着いたもののシャトルバスの乗り場が分からず、掃除をしていた中年の女性に尋ねてみたら、すごく早口で話すうえに強烈なアクセントが加わっているので、言っていることの3割くらいしか理解できませんでした。

私と同じようにショックを受けた日本人は少なくないのではと思い、インターネットで検索してみたところ、ニューヨークに留学している学生さんのブログをはじめ、たくさんの書き込みを見つけました。そのブログの作者も、初めての海外留学を考えている人にはニューヨークを滞在先としてあまりお勧めしないと書いています。

その理由の一つとして挙げられているのがやはり英語の発音の多様さとアクセントの難解さです。帰国後に友達にその話をしたところ、仕事で時々ニューヨークを訪れる彼もニューヨークで英語を聞き取るのは一苦労で、カリフォルニア滞在時に比べて6割程度しか分からないと言っていました。ただし、ニューヨーカーの英語を100%理解できるようになれば、どこの国に行っても英語で苦労することはないかもしれません。私自身もニューヨークに1週間以上滞在している間、現地の人たちの話の内容が日に日に理解できるようになってきていると感じましたので、ニューヨークを再訪するのが楽しみです。

 次に、以前からアメリカの暮らしについて不思議に思っていたことを今回も再び体験しましたので、それについても書こうと思います。
それというのは、コインランドリーを使用するときの料金の支払いがいまだにクウォーター(25セント)硬貨でしかできない場合が多いということです。

私が宿泊したホテルの地下にあったコインランドリーも、1回の洗濯と乾燥が合計で5ドルかかるのですが、支払いはクウォーター硬貨でしかできませんでした。そのため、洗濯のたびにホテルのフロントで5ドル紙幣をクウォーター硬貨20枚と交換してもらう必要があります。しかも、面倒がって急いで硬貨を投入口に入れると硬貨が認識されずに戻ってくるのでゆっくり、ていねいに投入しなければなりません。友人は盗難対策でそうなっているんじゃないかと言いますが、日本よりもカード払いが進んでいる国なのに頑なに硬貨しか受けつけない機械があるというのは何か別の理由があるのではないかと私は今だに腑に落ちません。どなたかこのことについて本当の理由をご存知でしたらぜひ教えてください。



 自分自身が変わったせいで、ニューヨークで意外な思いをしたことについてもお話しましょう。

私は20代~40代の頃はアメリカのハンバーガーや冷凍食品、さらにはポテトチップやトルティーヤチップなど、いわゆるジャンクフーズと呼ばれている食べ物が大好きで、アメリカを訪れる際にはそれらを食べるのも大きな楽しみの一つでした。しかし、今回50代で初めてニューヨークを訪れて、ホテルの徒歩圏内にたくさんラーメン屋さんがあったり、持ち帰りの寿司を売る店がたくさんあったり、日本の定食チェーンがあったりしたため、ジャンクフーズを食べる機会が今までで一番少なくなりました。

まず、調査初日に訪れた図書館の道路向かいに日本の食材とイートインコーナーのあるお店を見つけて、そこで電子レンジで温めるだけの牛丼の具とカレーパンを購入しました。さらに、休日にスターバックスに行った際に、若い女性二人がきれいな緑色の飲み物を美味しそうに飲んでいたので、もしやと思って調べてみたところ、案の定、その飲み物は抹茶フラペチーノだということが分かりました。

そこで、数日後に、私が図書館からホテルに向かって帰る途中、抹茶フラペチーノを買って歩きながら飲み始めたとき、口の中に抹茶の懐かしい味が広がって一気にリラックスできたのには自分でも驚きました。初めての土地で自分で思っていた以上に緊張して歩いていたんだな~と抹茶フラペチーノに気づかされました。

 緊張して歩いていた理由は、犯罪に合わないようにとの警戒心が一つの理由ですが、実はそれ以上に自分がひどい方向音痴だということのほうが影響していました。

例えば、図書館の休館日に地下鉄で美術館に行こうとした時に、地図を見間違えて逆方向の列車に乗ってしまい、元々目指していた方向に戻ろうと地下鉄を2回乗り換えたら、ますます自分の現在地が分からなくなって、結局、タクシーを使う羽目になったりもしました。さらに、図書館通いが1週間を過ぎた頃になって初めて自分の地図の見方が間違っていると気づいたこともありました。地図上の南北の方角は正しく理解していたのに、東西を間違えて見ていたのでした。しかも、地図は紙の地図だけではなく、スマートフォンの地図アプリを使っていてもその間違いに気がついていなかったので、自分の報告感覚の鈍さにあきれるばかりです。

 以上、失敗だらけのニューヨーク体験でしたが、将来、私が学生を引率してニューヨークを訪れる機会があれば、今回得た教訓を活かすことができるのではと思っています。そういう機会は意外に早く訪れるかもしれません。