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総合政策学部 総合政策学科

現場から社会を考える(刑務所参観について)

2019.8.30
  総合政策学部准教授 淡路智典

 総合政策学部の学生の中には、県庁や市役所の職員、警察官など公務員への就職希望者が一定数いる。そのこともあり、学生たちに行政活動・実務の現場を見せるための講座を行っている。具体的には授業の一環として山形刑務所に出向いて、施設見学をし、職員の方々から話を聞くというものである。今回はこの授業を紹介したい。
 まず刑務所参観の話をする前に、刑務所に関する基礎データを提示する。そもそも刑務所とは、犯罪を行い裁判で自由刑が確定したものを収容する施設である。自由刑とは受刑者の自由に制限する刑罰であり、より細かく分けると懲役刑と禁固刑と呼ばれるものである。つまり、刑事施設内に閉じ込めるという刑罰となる。ちなみに懲役刑と禁固刑の違いは、刑務作業が義務付けられるというか否かである。懲役刑の場合は単に刑務所に閉じ込められるだけでなく、日中は仕事しなければならない。
 刑務所は全国に67ヶ所あり、東北地方には6つの刑務所と1つの刑務支所がある。あまり知られていないことであるが、刑務所には種類があって、アルファベットで表されている。一番基本となるのがAという指標とBという指標である。Aが付く刑務所は、初犯・犯罪傾向の進んでいない者を収容する施設となる。逆にBが付く刑務所は、累犯(複数回犯罪犯した人)・犯罪傾向の進んでいる者を収容する施設である。この二つの指標に追加でLやWやFという追加の指標が付く。Lはロングを意味し、懲役刑の期間が主に10年以上の長期囚を収容する。Wは女性受刑者を収容、Fは外国人受刑者を収容する施設に付く。
 我々が例年参観させていただいている山形刑務所は主にLAを対象とした刑事施設である。つまり、初犯で10年以上の懲役刑などを言い渡された受刑者を対象とする施設である。
 それでは山形刑務所に実際に行ってみた感想を伝えたい。建物は遠くから見たら刑務所だとは気づかないほど一般にイメージされているもの違っている。ドラマ等に出てくる刑務所といえば物々しい門構えに、壁には一面有刺鉄線が張り巡らされてみたいイメージだと思うが、実際は壁が少し高めだとは思うかもしれないが普通の工場みたいな印象である。内部も全体的に手入れが行き届いていて、受刑者が寝起きする居室も鉄格子などはついておらず、居室全室に液晶テレビが備え付けてある。
 処遇の特徴としては、職業訓練に力をいれており、自動車整備工場まで刑務所の中に併設されている。そのため、各地の刑務所から職業訓練を受けに派遣されてくる受刑者もいるとのことだった。受刑者に対してこれほどの手厚いケアをするのに違和感を覚える人もいるかもしれないが、これも理由があって行われている活動なのである。その理由とは、刑務所出所時に就職先が決まっているかどうかと再犯率に非常に高い関連性があるからである。出所してすぐに仕事がある人の再犯率は非常に低く、逆に仕事がない人の再犯率は比較してかなり高くなる。再犯防止と職業訓練は密接な関係があるのであった。現在の刑務所は、単なる受刑施設を超えて、市役所やハローワーク等とも連携する複合的な施設となっている。
実際に現場を見て、そこで働く人に話を聞いて、初めて見えてくるものもある。この刑務所参観が学生にとってそのような気付きのきっかけになってくれていれば、教育目的の大部分は果たせたのではないかと思う。

※実際に刑務所を見てみたいという方は、多くの刑務所では矯正展という名称で刑務作業で作った品物の販売会を行っており、その際に内部の公開をやっていることもあるので、お近くの刑務所に問い合わせてみてください。