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総合政策学部 総合政策学科

仙台で災害救助犬と暮らしはじめる

2019.8.15
  総合政策学部教授 岡 惠介

 いざルカと服従訓練をはじめると、それまでプロの訓練士としか、訓練をしてこなかったルカの反応は興味深かった。もちろん素人ハンドラーの私が出すコマンドは、プロと違って不正確であったり、分かりにくかったり、犬の心理を理解しないものであったから、戸惑ったと思うし、お互いうまく出来ないことも多かった。
 でもそれ以上にルカは、「今まで訓練士さんとやってきた(ちょっと退屈な)服従訓練を、今度はお父さんとやるの!」という驚きと楽しさを感じてくれたようだった。訓練士さんも私の左側についてニコニコして歩くルカを見て、「ルカはお父さんと訓練をすると、女の子になりますね」と評し、私のモチベーションを上げてくれた。
 二〇一五年の雨の降る一一月、私がハンドラーとなって、ルカと二人(犬)六脚の災害救助犬の認定審査会に無事合格し、認定証を得ることが出来た。この年からは、それまで所属していた「災害救助犬ネットワーク」という団体から「東日本救助犬ユニオン」が分かれて新設された最初の認定審査会だった。
 合格はしたけれど、認定審査会を通じて私は、ハンドラーとしての力の足りなさを痛感した。審査員から見て、ルカが明らかに要救助者の臭いを見つけて、捜索をはじめたがっているのに、私がそのルカの様子を感じ取ることが出来ず、捜索しないで別の場所に移動してしまうようなミスが多かったのだ。臭いを見つけた時の耳の位置の変化や、僅かにテンションが上がった様子などなど、小さなサインをハンドラーは見逃してはいけない。「犬は良いけど、ハンドラーがね(苦笑)」という評価を、以後もらい続けることになる。
 このように災害救助犬の捜索は、犬が勝手に探すものではなく、犬のサインを観察して捜索させるハンドラーの技量が重要になる。
 前年から仕事の都合で仙台に単身赴任したため、ルカは盛岡の訓練所に預けて訓練し、週末に盛岡に戻ってルカを引き取り、週明けにまた預ける形で訓練士さんにお任せになっていた。
 しかし認定審査会で痛感した、まだまだ捜索時のルカの示すサインを読み取れていないという思いから、新たに大型犬飼育可のアパートを探し、彼女と仙台で新たな同棲生活をはじめ、一緒に自分で訓練していくことにした。
 勤務先の大学からは、キャンパス内の芝生でルカと訓練する許可もいただき、本格的にルカとのペアで災害時の実働に備えた訓練をはじめたのだった。