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総合政策学部 総合政策学科

令和元年の漢字

2019.12.9
総合政策学部准教授 増井 三千代


 前回、『国見テラス』の原稿を執筆したときは(「新しい時代へ」2019年5月7日発表)、ちょうど平成最後の日だった。あれから瞬く間に月日が流れ、奇しくも今回の執筆は令和元年の終わりを迎える時と重なった。

 令和初日、平和と希望に満ちた新たな時代の幕開けを誰もが願ったはずだが、果たして令和という名にふさわしい一年になっただろうか。 

 天皇陛下の即位を祝うパレードが盛大に行われた日のことはいまだ記憶に新しいが、当初は10月22日の「即位礼正殿の儀」の後に予定されていた。しかし、東日本各地に甚大な被害をもたらした台風19号の影響により、祝賀パレードは延期された。

 そして、雲一つない秋晴れの中、パレードは実施された。天皇皇后両陛下が沿道に集まった人たちの大歓声に笑顔で応えられる様子が、繰り返しニュースで映し出された。この祝賀ムードに溢れる様子は、令和元年の歴史的な出来事として、人々の心に深く刻まれたに違いない。

 だが、そんなパレードの様子を避難所のテレビで複雑な思いで見た人や泥まみれになって自宅の後片付けに追われていた被災者がいたことを忘れてはいけない。数々の大災害に見舞われた平成が終わり、令和こそは災害の少ない時代にと願ったが、皮肉にも自然災害の歴史を塗り替えるスタートになったことは実に残念である。

 一方、スポーツ界は明るいニュースに包まれた。ゴルフの全英女子オープンに初めて出場して優勝した渋野日向子選手や仙台にも縁がある米プロバスケットボール(NBA)の八村塁選手、スペインの強豪サッカーチームに移籍した久保建英選手など、世界を舞台に活躍する若いアスリートたちの話題に事欠かなかった。

 また、日本で初開催となったラグビーワールドカップ2019は、日本代表チームの快進撃も重なり、被災地に元気を与え日本中を熱狂させた。来年にはいよいよ東京オリンピックが開催される。ぜひ、令和のスポーツ界は、永く輝かしい歴史を刻んで欲しいと願う。

 さて、令和元年が終わるまで、あと数週間あまりとなった。これから年末に向けて、様々な切り口でこの一年を振り返るニュースや情報が出てくるだろう。その中でも日本漢字能力検定協会が1995年から実施している所謂「今年の漢字」が間もなく発表される。

 実は、毎年12月の授業では、当該年度の学生自身のふりかえりと次年度の目標設定として、漢字を一つずつ選んでもらい、英語で説明させている。今年はこの授業を少し前倒しし、「今年の漢字」に何が選ばれるかも予想させた。

「令」「新」「風」を有力とする学生が多く、他には「結」「初」「一」「嵐」「異」などが挙げられた。
いずれも令和元年の世相を良く表しており、彼らの見る目はなかなか鋭い。誰の予想が当たるか楽しみである。