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総合政策学部 総合政策学科

福袋と射幸心

2020.1.28
総合政策学部准教授 秋山まゆみ

 私は商品に付いている「おまけ」が大好きである。

幼い頃よりGリコのおまけ、パンに付いているPケモンシールにはじまり、大人になってもファッション雑誌に付いているポーチや手帳などの付録が欲しいがために自分の年齢とかけ離れた方々を対象とした雑誌にまで手を出す。本来ならば主たる商品であるキャラメルやパンや雑誌の内容を目的に商品を選ばなければならないのに、従たる商品であるおまけ欲しさに商品を買っているのだ。

そんな私が大学生になった時、景品表示法という法律の中で「おまけ」にも上限があることを知った。

 景品表示法上の「景品類」とは、
(1)顧客を誘引するための手段として
(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
(3)物品、金銭その他の経済上の利益 
を指す。

ここでいう景品類に該当する場合に、景品表示法に基づく景品規制が適用されることになる。
Gリコのキャラメルに付いているおまけは、景品類の中でも特に「総付景品」とよばれ、取引価格が1000円未満の場合は景品類の最高額は200円まで、1000円以上の場合は取引価格の10分の2までと上限が決まっている。

なるほど、幼い頃にもっと豪華なものが入っていれば良いのになぁと思っていたが、法律で規制されていたのだ。

 このような幼心の淡い期待を踏みにじるような法律が存在する理由は、事業者が自分の商品を買ってもらうよう誘引するため顧客の射幸心につけ込んで景品類を付属させ、一般消費者の自主的で合理的な商品選択を阻害するおそれがあるから法律で規制するのだという。

だから私のようなおまけに目がくらんで商品を選ぶのは正しい買い方ではなく、きちんと主たる商品の価格や内容で判断する「賢い消費者」にならなければいけないと大学生の時に習った。更に、外国では景品表示法のような法律がなくても消費者は正しく商品を選ぶのだと先生は言った。

 あれから随分時が経ち、自分が学生に景品規制について話す立場になった。「賢い消費者」に自分がなれているかについては自信が今一つ持てないが、賢い消費者を育てることについては少し自信が持てるようになってきた。


そんな私が仙台にやって来て、初めてのお正月を迎える。

言うまでもないが仙台でお正月といえば「仙台初売り」が有名だ。

射幸心に打ち勝てず福袋には何度も痛い目に合ってきたおかげで最近はとんと福袋には手を出さずにいたが、仙台の初売りは特別である!
しかも幼い頃より宮城県出身の母から「仙台の初売りは特別なのよ。高級バッグのEルメスが入っていたりするのよ」と聞いて育ち、景品表示法ですら仙台の初売りは「慣習」としてお目をこぼしてきたという(現在ではさすがに仙台の初売りといえども他の景品類と比べたら緩いが上限が決められているが)。

せっかく仙台に来たのだし初売りに参加してみようと思ったが・・・。
なんと初売りの2日前なのにテントを張って並んでいる人を商店街で見た。近所のYドバシカメラでは並べるよう数日前から店舗内を解放しているという。

射幸心が街全体を揺るがしている!

その圧倒的なパワーに押され、さすがに初売りに参加するのは諦めたが、今年は好きなブランドの福袋を買ってみた。仙台を揺るがす射幸心にあおられ同じブランドの福袋を欲張って2つ買ってみた。中身はバッグ2個とお財布だという。

結果は、
①全く同じ形・色のお財布が2個、
②全く同じ形・色のバッグが2個、
③②とは違う形のバッグで全く同じ形・色のバッグが2個、手に入った。

すなわち福袋の中身は全く同じものが入っていたのだ。
好きだから使うが、この経験を踏まえて来年のお正月にはもっと「賢い消費者」になっていることを仙台の空に誓った。