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総合政策学部 総合政策学科

心の復興イベント

総合政策学部教授 志賀野 桂一


阪神淡路大震災から20年、身近に起こった東日本大震災の発災から、4年の歳月がたとうとしています。

私自身、《かたりつぎ》というイベントに関わり今回で4回目となります。1月17日原点の阪神淡路の震災後を知るために神戸に飛びました。早朝神戸の街を歩くと三々五々市民が広場に集まり、献花とろうそくに火を燈し帰っていく。只々それだけの行為なのですが、20年の歳月を過ぎて、今なおこうして行われる鎮魂の催しには、ジンと胸にくるものがありました。

「今後は 助成も支援もどんどん無くなっていくわけで、はたして自力でやっていけるか 家族で生活していけるのか、考えれば考えるほど、不安になるけど、子ども達の存在が、私の心の支えになってくれている。子どもって宝だな、3人産んでいてよかったなって、今、心からそう感じている。」これは、今回、《かたりつぎ》で使われる女川町で旅館業を営むSさんの証言です。

この《かたりつぎ》プロジェクト 当初は、神戸で1999年から行われていた全国公募の「詩の朗読と音楽の夕べ」を踏襲してはじめたのでした。

仙台での第1回目は、全国から集まったマンドリン・オーケストラZIPANGU「絆」の協力で東北大学川内萩ホールで行われました。第2回目からは、東北大学の災害科学国際研究所の協力によって、東北の広域な被災地で拾い集めた証言集の文章を朗読するようになり、意味が大きく変わっていきました。

証言者から許諾をもらい、証言を短く編集し、災害時の事実[情報]と、その時抱いた感情などが交錯する文章に仕上げられています。純粋な詩を読むよりはるかに難しいと思われるそれらの言葉を、女優・竹下景子さんが朗読するという形式を採っています。

第3回、第4回に共通するのは加川広重さんの描いた巨大水彩壁画を舞台背景として使っていることです。今回多賀城市で使われるのは、震災3部作の第1作目の〈雪に包まれる被災地〉という作品です。この絵は、画家にとってのみならず、3.11にとって後世に残る作品(記念碑)と感じるのは私ばかりではないと思います。

美術家・藤浩志は、著書『見る、聞く、話す、感じる、そして考える。』で「被災地は多くのアートに満ちていた。ありえない状態を乗り越え、死と絶望の現場を希望へ変えた瞬間を乗り越えた結果として今の生があったはずである。」と記しています。

私たちは、いま何を感じ、考えなければならないか、時間とともに忘れ去られる負の記憶にしっかりと向き合うことが求められているのではないでしょうか。