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総合政策学部 総合政策学科

オーストラリア流働き方

2018.03.08
総合政策学部准教授 増井 三千代


オーストラリア研修引率で、今年もまたケアンズに来ている。今回で5回目となる研修は、初めて街の中心部に位置する語学学校で行うこととなった。昨年度まで、学生は市バスを利用してホームステイ先から学校へ各自通学したが、ここではホストファミリーが毎日送迎をしてくれる。

一方、引率教員は滞在先から学校まで歩いて通学している。ちょうど雨季にあたるケアンズは高温多湿で、10分も歩くと額から汗が流れ落ちる。だが、早朝から夏の日差しを浴びながら南国情緒が漂う街を歩くのはなんとも気持ちが良い。

そんな朝の通学時に必ず目にするのが、出勤前にオープンカフェでゆったりコーヒーを飲んでいる人やすでに汗だくになって働いている清掃員や建設作業員である。さらに、大きなスーパーマーケットが朝7時には開店していて、早くから買い物をしている人たちの姿も見られる。

オーストラリアでは早寝早起きが基本である。特にビジネスにおいてはフレックスタイム制が浸透しており、多くの人が朝早くから仕事を始め、午後早くに仕事を切り上げる。帰宅後はスポーツジムやプールで汗を流したり、家族やパートナーと一緒に時間を過ごしたりするなど、いわゆる「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」をとても大切にしている。

実際、そんなライフスタイルを後押しするように、ケアンズ中心部には屋外プール、遊歩道、バーベキューコンロなどが完備されていて、誰もが無料で利用することができる。夕方には学校や仕事を終えた人たちが泳いだり、ランニングをしたり、近くのスーパーで食材を買って夕飯にバーベキューを楽しむ人たちであふれている。ここではごく当たり前の日常風景だ。

こうしたゆったりした働き方は、小売店の営業時間にも表れている。例えば、ケアンズ市内の大きなショッピングセンターでは、平日は9:00から17:30まで、日曜・祝日は10:30から16:00までとなっている。唯一、木曜日だけがLate Night Shopping Dayとして、午後9時まで買い物をすることができる。個人経営の店は其々の営業時間となるが、いずれも日本と比べると週末の営業時間は圧倒的に短い。たとえ観光地であっても、地元の労働者の生活が優先されているということの証である。

このように無理なく自由な働き方を実現しているオーストラリアとは対照的に、日本ではワークライフバランスに関する取り組みが始まったばかりである。月末の金曜日は早く仕事を切り上げ、日常よりも豊かな時間を過ごそうという「プレミアムフライデー」制度は定着するだろうか。個人的には日々オーストラリア流の方が嬉しいが……。