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【作業療法学専攻】2019年度特論発表会

作業療法学専攻
9月10日に2019年度の特論発表会を開催しました。各特論班の発表内容を紹介します。
(これまでの特論発表会の記事はこちらです)

大黒特論班
タイトル:回復期リハビリテーション病棟における脳卒中に対する作業療法の研究動向

 実習を通して脳卒中の作業療法による介入を経験しました。介入を行う中で回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)における脳卒中の作業療法ではどのような介入を行ない、どのような効果を得ているのか知りたいと考えました。そこで、回復期リハ病棟が開始された2000年以降の文献を検索し、回復期リハ病棟における作業療法の効果と研究動向について文献研究を行いました。
 結果は、作業療法の特徴である機能改善やADL・IADLに介入し効果を得ている報告が多く見られました。回復期リハ病棟の使命である急性期病院より患者を早期に受け入れ,ADLを改善させ,在宅復帰率を高めることが、作業療法において実践されていました。


髙木特論班
タイトル:作業に対する価値や楽しみが作業バランスに与える影響~臨床実習を通しての検討~

 作業には「したい作業」もあれば「しなければならない作業」もあり、これらの作業のバランスが健康に影響すると言われています。臨床実習のように大学での生活環境と大きく異なる環境に身を置いたときに、もともとは「したい」と思っていた作業が「しなけばならない」作業に変わってしまうことがあります。
例えば、着替えをするという作業は「おしゃれ」として認識していたはずが、環境が変化すると単なる「義務」としてとらえるなどです。今回は、環境の変化によって作業の意味がどのように変化するのかを、作業に対する楽しみや価値観から検討しました。結果として、環境変化によって意味が変わりやすい作業とそうでない作業があることがわかりました。一方、楽しみや価値観との関係は十分な結論を得ることができませんでしたが、今後作業療法を必要とする方への作業の使い方や考え方について深く考える有意義なゼミとなりました。


高橋特論班

タイトル:ABABデザインを用いた訓練方法による箸操作習熟の比較

 箸操作など、生活の中で必要度が高く、高い運動技能を要する動作が上達する過程が、2つの練習方法で異なるのかを比較しました。右利きの健康な大学生4名を2群に分け、A群は左手で箸で大豆をつまんで移動する反復練習を、B群は左手で箸先でお手玉を滑らせたり、ひっくり返す練習をそれぞれ3日間行いました。練習前、練習後、4日間の練習休止後、最練習後の4回、大豆をつまんで移動する時間や箸操作のフォームを比較したところ、どちらの群も練習後に動作が速くなりました。お手玉練習群は右手に近い動作が可能になり、反復練習群は、体が傾いたり、手関節に力が入りすぎるなど、右手とは異なったフォームになり、筋肉痛・疲労が認められました。お手玉での練習のほうが、箸先の感覚が伝わりやすかったので、右手で学習した運動技能を、容易に左手で学習できたのではないかと考えました。


王特論班
タイトル:台湾大学と東北文化学園大学の作業療法学生における生活時間配分について

 本研究では,台湾大学作業療法(以下NTUOT)学生と本学作業療法(以下TBGUOT)学生には生活時間配分に違いがないかを明らかにすることを目的としました.方法はNTUOT2,3年生とTBGUOT2,3年生を対象に平日・休日の生活時間配分に関するアンケートを実施し,対象学生に平日、休日の「睡眠・睡眠以外のADL・学業・自習・校内活動・バイト・余暇・その他」のそれぞれ費やしている時間を回答してもらいました.
 分析した結果,NTUOT学生はTBGUOT学生より平日の睡眠,平日・休日の校内活動,休日の学業の時間が有意に長かったです.また,TBGUOT2年生はNTUOT2年生より平日の学業,休日の余暇時間が有意に長かく,TBGUOT3年生は他の学生より平日・休日のバイト時間が有意に長かったです.


首藤特論班
タイトル:大腿骨頸部骨折に対する作業療法士のアプローチについての文研研究

 下肢の骨折のリハビリテーションでは、下肢の筋力の強化や歩行の訓練を行うことが多く、理学療法士が多くかかわっていました。しかし近年作業療法に処方が出されることが多くなってきました。そのため下肢の骨折で処方が出されることが多い大腿骨頸部骨折(大腿骨のつけねの骨折)に対する作業療法の介入について、文献を使って調べることにしました。
結果、作業療法士は日常生活で行う動作、特に立った姿勢、歩行を伴うような動作に関わることが多く、それに伴い下肢の筋力の強化の訓練、応用的な歩行の訓練のような動作の基礎的な要素の訓練も行っているということがわかりました。


北川特論班
タイトル:自己効力感と自尊感情が作業活動に及ぼす影響について

 自己効力感と自尊感情が作業活動にどのような影響があるのかを調べました。対象者が経験したことのない作業活動に取り組んでもらいました。その作業活動をする前と後で自己効力感と自尊感情を測定して、作業活動と自己効力感、自尊感情の関係を調べてみました。作業活動の前後において自己効力感、自尊感情に大きな変化がなかったという結果になりました。
学生は臨床実習で対象者が作業活動を行い完成したときに喜びを顔の表情からみたり、作業活動ができたことから自信を取り戻したりする方々をみてきた経験から、このような研究に取り組みました。臨床実習での経験を卒業研究という研究ベースでは捉えることはできませんでしたが、作業活動の効果をどのように捉えていけばよいのかを勉強する一助になったようです。



香山特論班
タイトル:認知症の方の家族の介護負担感に関する調査~作業療法士は家族に対してどのような介入ができるのかを考える~

 認知症の方が作業療法の対象になることが多いが、その家族に作業療法士が介入している実践が少ない状況です。本研究では、作業療法が家族にどのような介入をしていくべきかを明らかにする目的で、認知症を有している方がいる家族に2名にインタビュー調査を行いました。
 その結果、家族の介護負担感の軽減に大きく影響しているのが、本人に役割を与えることであり、家族には相談できる相手がいることが重要であることがわかりました。更に作業療法士には家族の介護の大変さを傾聴・共感する姿勢を持ちながら、認知症の方ができる能力を評価し、生活の中で何らかの役割を獲得できる支援が重要であることもわかりました。この調査結果は、今後作業療法士が認知症の方の家族支援を行う上で大変貴重なものとなりました。


本多特論班
タイトル:両手動作は片手で補えるのか?~両手動作に関する文献考察~

 日常生活では多くの動作を両手で行なっていますが、脳血管障害による片麻痺では,片手のみでの生活を余儀なくされます。両手の機能を何かしらの手段・方法で補い,損なわれた機能を取り戻すことが,生活の質を向上させると考えられます。
 今回は「両手動作を片手で行えるのか」について文献検索をしました。結果、ほとんどの動作は片手で行うことができ、補えない動作は、「反物を巻く・帯を締める・あやとりをする・糸こぶを作る」といった項目のみでした。また、片手で補う動作は「保持」と「つかむ」で補う動作全体の半分を占めていることが分かりました。しかし、どのように保持をするのか、どのようにつかむのかといった関節運動(どの程度関節が曲がっているのか)までは分析することができませんでした。


西澤特論班
タイトル:つまみ動作・にぎり動作の決定要因の検討

 私達は物の大きさや色の違いによって、物をにぎったり、つまんだりしています。物の大きさや色、重さの印象によって「にぎる」か「つまむ」はどのように決めているのでしょうか。今回の実験では様々な大きさ(直径1㎝~10㎝)や色の対象物(黒、白、銀の筒)を見せ、つかむか、にぎるかを回答してもらいました。実験の結果、黒色の対象物では「にぎる」を選択することが多いことが分かりました。このことから重さの印象がつまみ動作や握り動作に影響しているのではないかと考えました。


津田特論班
タイトル:「アルツハイマー病」と「パーキンソン病」の発症メカニズム究明とその病理機構を基盤とした治療法の提示

 現在、高齢化に伴い、治療が困難であるとされているアルツハイマー型認知症とパーキンソン病の患者が増加しています。それらの疾患に対して、どのような診断方法や治療が確立されているのかを文献や教科書、授業資料から調べました。アルツハイマー型認知症の原因には遺伝的要因と環境要因の2つがありました。パーキンソン病の中脳黒質の神経細胞の脱落により、ドーパミン産生量の著しい減少が起こり、スムーズな運動が難しくなることが分かりました。薬物療法では、ドーパミンの量を増やすこと、ドーパミンを取り巻く環境を整えることが現在の医療として確立していることが分かりました。また、薬物療法に加え、リハビリテーションを行うと薬物療法の効果が最大限引き出せることが分かりました。